1月の論文紹介まとめ
医局SNSでは適宜論文紹介を行っております。紹介する論文は、新しい論文で医局員がオモシロイと思ったものです。 1月に紹介された論文を、コメント共に紹介します。 ご興味ある方はぜひご一読ください。
1.Timing of Initiation and Efficacy of Dual Antiplatelet Therapy in Minor Stroke or High-Risk TIAShin J, et al. Stroke. 2026 Jan 2. 今回は軽症脳卒中および高リスクTIA患者における抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の開始タイミングとその有効性に関する大規模な観察研究(CRCS-K-NIHレジストリ)の論文です。DAPT(アスピリン+クロピドグレル)は、発症後24時間以内の軽症脳卒中や高リスクTIA患者に対する標準治療として推奨されています。しかし、実臨床では受診の遅れなどにより24時間を超えて治療が開始されることも少なくありません。これまで発症後72時間までのDAPT開始の有効性が示唆されていますが、最適な開始タイミングや時間的閾値は依然として不明確でした。本研究は、DAPT開始時間と臨床転帰の関係を明らかにすることを目的としています。 対象は2011年1月から2023年4月までの間に発症から7日以内に入院した軽症虚血性脳卒中(NIHSSスコア 5以下)または高リスクTIA患者です。入院時にDAPTを開始した群とSAPT(アスピリンまたはクロピドグレル)を開始した群で90日以内の脳卒中再発、心筋梗塞、全死亡の複合イベントを評価し、発症から病院到着までの時間別に解析しました。 結果、90日間の主要イベント発生率は、DAPT群で10.7%、SAPT群で11.6%で、調整後のハザード比(HR)は 0.82 [95%CI 0.77–0.87] であり、DAPT群で有意にリスクが低い結果となりました。発症から到着までの時間別にみると、 24時間以内の開始だとイベント発生率はDAPT群 11.9% vs SAPT群 14.5% HR:0.740.74 [0.69–0.79]とDAPTが有利ですが、 24-72時間の開始だとDAPT群 9.5% vs SAPT群 8.3% HR:1.00 [0.88–1.15]と有意差がなく、 72時間超の開始だとDAPT群 7.2% vs SAPT群 5.6% HR:1.25 [1.01–1.55]とむしろDAPTが不利な結果でした。DAPTの優越性が消失する(統計的な有意差がなくなる)閾値は、発症後 約42時間でした。具体的には 脳卒中再発に対する閾値は約45時間、全死亡に対する閾値は約17時間でした。 t-PAや血管内治療に限らず、やはりDAPTも早いに越したことはない、ということですね。一方で、時間経過した症例に対する「何となくのDAPT」も不利益を生みます。引き続き症例ごとの慎重な検討が必要そうです。(strokeチームより)
※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/STROKEAHA.125.053343
2.Tau in Alzheimer’s disease: Shaping the future patient journey. Mummery CJ, et al. J Prev Alzheimers Dis. 2026 Jan 1:100447. アルツハイマー病(AD)におけるタウ研究の進歩を中心に、治療と診断の最新動向をまとめた総説です。 ADは、アミロイドβ(Aβ)とタウの脳内への蓄積を特徴とする疾患です。近年、抗Aβ抗体療法が実用化されたことで、AD治療は大きな転換期を迎えています。現在、タウを標的とした治療薬も臨床開発が進められており、将来的に治療の選択肢がさらに広がることが期待されています。さらに、タウを含むバイオマーカーを用いた診断技術も進歩しており、病気の進行段階に応じて、より適切な医療を提供できる時代が近づいています。(PDチームより)
※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2274580725003887?fbclid=IwY2xjawPuQdVleHRuA2FlbQIxMABicmlkETFDamdOTjlxVURLbE9XUTJ0c3J0YwZhcHBfaWQQMjIyMDM5MTc4ODIwMDg5MgABHn3Tct_qtC1pfpQkUyIGSI-4VVzpEOHPTm0WAabZ1PmgMGO2mG_KeCjCpzw5_aem_XIEwkumC1RhsJo_-zI2DCg
3.Early Post-Thrombectomy MRI Markers: Temporal Evolution and Association With Reperfusion and Clinical Outcome. Luby ML, et al. Neurology. 2025 Dec 23;105(12):e214418. doi: 10.1212/WNL.0000000000214418. EVTでは、血管の再開通が得られても必ずしも良好な臨床転帰に結びつかない症例が少なくありません。EVT後早期に施行したMRIにおける再灌流状態と画像マーカーの経時的変化が、臨床転帰とどのように関連するかを検討した論文になります。 前方循環の主幹動脈閉塞に対してEVTが試みられ、EVT後6時間以内および24時間後にMRIを施行した207例を前向きに登録し、不完全再灌流の有無、病変増大、浮腫、灌流パターンなどのMRIマーカーを評価しました。 結果、EVT後MRIで不完全再灌流は54%に認められ、不完全再灌流群では病変増大・脳浮腫が24時間後・5日後ともに有意に多いこととなりました。mTICI 2b/3でも、IMR(微小循環障害)や混合灌流パターンがしばしば残存していました。 24時間後にstable lesion pattern(病変増大・浮腫なし)は全体の12%のみで多くはEVT後も進行性に拡大しており、24時間後NIHSSは不完全再灌流群で有意に高値(8 vs 13)でした。 少し難しいかもしれませんが、「再開通(recanalization)」と「再灌流(reperfusion)」は別物である、と主張する論文です。その核心は微小循環障害(Impaired Microvascular Reperfusion:IMR)にあり、微小血栓や内皮障害、血管攣縮などで毛細血管・細動脈レベルで血流が流れないことによります。 今後、血管内治療で再開通を目指した後に再灌流を目指す治療(t-PA動注療法でしょうか?)も必要になってきそうですね。(Strokeチームより)
※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41284954/
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